『例の場所、オーケー出たから、さっそく案内してやるー』

「……今日?」

『おう、今から』

その声と同時に、インターフォンが鳴った。

『こんちわー』

まさか、と思いながら玄関へ向かう。後ろから花音もついてきた。

「……随分と急だね。こちらの予定を聞いてからにして欲しかったな」

『善は急げ、だろぉ~。早いほうがいいかと思ってよぉ』

電話越しに会話しながら扉を開けると、明るい髪色の少年がニイ~っと笑いながら立っていた。

「おっす」

鋭い瞳を細くして人懐こい笑みを浮かべていた響也は、僕の影に隠れている花音を見つける。

「お、妹ちゃん? こんちわー」

僕の後ろで、ビクリと花音が震えたのが分かった。

僅かに覗かせていた顔を完全に僕の背中に隠してしまう。

「こ、こん、にちは……」

僕のシャツをぎゅうっと掴みながら、今にも消え入りそうな声で挨拶をする花音。

彼女は人見知りの恥ずかしがり屋だった。初対面の人間にはまず懐かない。