俯いて返事をしない僕を、母は心配そうに見つめる。

「……和音? 親しい先生が亡くなって辛いのは分かるけど……いつまでもそんな風じゃ、水琴ちゃんにまで心配かけてしまうわよ……?」

僕を励まそうと必死になる母のその言葉が、僕の胸を鋭く貫く。

「分かってる!」

母の手を強く振り払い、声を荒げる。

大きく目を見開いた母と目が合って、はっとした。

「……ごめん」

謝る僕に、母も我に返ったように小さく息を吐いて、すぐに笑みを作った。

「いいのよ。母さんも……ごめんなさい」

その笑顔を見ているのが辛くなり、顔を背けた。

「……ごめん」

もう一度そう呟いて、部屋を出る。

「和音? どこへ行くの?」

そう訊ねる母の声を無視してドアを勢い良く開けると、そこには拓斗と花音が並んで立っていた。

2人揃ってビクリと肩を跳ね上げた後、心配そうに僕を見上げる。