そうこうしているうちにクッキーも焼き上がり、オーブンから出して花音に見せたら大喜びしてくれた。

「まだ熱いから、食べるのは冷めてからだよ」

「はぁーい」

ダイニングテーブルに並べられた動物たちを眺め、花音はにこにこ笑顔。

それを横目に見ながらミトンを外していると、リビングの方から携帯の着信音が聞こえてきた。

「あ、お兄ちゃんのー」

「うん」

ダイニングから繋がっているリビングに行くと、『狭き門』の隣に置いていた携帯がチカチカ光りながら鳴っていた。

ディスプレイに表示されている名前は『鳴海響也』。

そういえば、日曜までには練習場所を使えるかどうか聞いておくと言っていたな、と思い出しながら通話ボタンを押す。

「もしもし」

『おう、和音ー。俺ー』

「うん、どうしたんだい?」

話していると、花音が隣に寄り添って僕を見上げてきた。

『誰?』と目で訴えてくるので、片手を挙げて『待ってて』と合図し、耳を澄ませた。