庭の片付けを家人たちに任せ、僕たちは濡れる前にリビングへと駆け込んだ。

「天気予報のうそつきー」

ぷう、と頬を膨らませ、鉛色の空を睨みつける花音。

その腕にはすっかり馴染みとなった小さなウサギのぬいぐるみ、五所川原がいる。

「もうすぐ梅雨入りするって言っているから仕方ないわ。十分に楽しませてもらったわよ? ありがとう、花音ちゃん」

花音の頭を優しく撫で、水琴さんは微笑む。

「えへへー」

頭を撫でられて、花音は嬉しそうだ。

「お茶を淹れ直しましょう。水琴先生は座っていてくださいね。……花音、手伝ってくれる?」

窓際に立つ水琴さんと花音にそう声をかける拓斗。

「はーい」

花音は機嫌よく返事をし、並んでダイニングへ続く扉の向こうへ消える。

拓斗はまた……気を利かせてくれたのだろうか。

苦笑しながら彼らを見送って、水琴さんと取り残されたリビングの中。

暖炉の上にあるアイアン製のハンギングクロックの、カチ、カチと秒針を刻む静かな音と、さあさあと音を立てる雨音に、しばし無言になった。