演奏が終わると、水琴さんが立ち上がって拍手をしてくれた。

「凄い、いつの間にこんな素敵に仕上げたの?」

賞賛の声に、僕たちは顔を見合わせて微笑み合う。

「まあ、毎日同じ家にいますから、練習時間はいくらでも確保出来るんです」

「そうなんです」

「ね~」

毎日リビングやダイニング、その他、気が向いて集まった部屋で顔を付き合わせ、話し合って、楽器を弾いて。

3人で編曲をするという、初の試みにもチャレンジ出来たし。

なかなか有意義な時間を過ごせた。



それからは水琴さんからリクエストを受けたり、一緒に演奏をしたり、または水琴さんのソロを聴いたりと、豪華な演奏会が続いた。

合間に色んなゲームを挟んだりしながら庭で楽しむ僕たちの頭上は、だんだんと涙色に染まり出す。

少しずつ、少しずつ、手の届かないところへ近づいていく彼女との別れを惜しむように。

ぽつ、ぽつと。

空は冷たい雨を降らせる。