「水琴さん、こちらへどうぞ」

僕は笑顔で手の差し伸べる。

そして戸惑いつつも笑顔で僕の手を取った水琴さんを東屋へ案内した。

「凄い、わね」

水琴さんは目を丸くしながら辺りを見回した。

今日は東屋全体をピンクと白の薔薇で飾り付けてある。中央に置いたテーブルにも薔薇を飾って。

さすがに、この辺りは庭師に手伝ってもらったけれど。


水琴さんの手を放し、椅子を引いて座るように促すと、「ありがとう」と微笑んで座ってくれた。

その彼女が座った真っ白なテーブルを飾るのは、赤い薔薇だった。

青々とした大きな葉のついた薔薇たちが、テーブルを縁取る。

「綺麗」

ぽつりとそう呟いて、甘い芳香を放つ花たちを目を細めて見る水琴さんに微笑みかけてから、木陰の下で待機している拓斗と花音を見る。

2人は頷いて、花音が少し緊張した面持ちで口を開いた。