水琴さんは6月の結婚式のため、6月から7月上旬までヴァイオリン講師を休むことになっている。

一次予選のテープ録音までやった後から休みに入り、二次予選前には戻ってくる予定だ。


「え~、拓ちゃんもパリに行っちゃうのぉ……?」

寂しがり屋の花音は早くも泣きそうだ。

「まだ分からないよ。まだ……うん、もう少し、考えてから。父さんからのプレッシャーもあるし……」

と、拓斗は苦笑い。

拓斗は父から『指揮者を目指そう! なっ? お父さんの弟子にしてあげるから!』と迫られていた。

花音と同じく寂しがり屋な父は、僕を弟子にする母が羨ましいらしい。

なんなら花音でもいいぞ、と言っていたけれど。

「私は楽器弾く方がたのしいなー」と、あっさり断られていた。この辺り、花音はちゃっかりしている。

拓斗は優しいから、人の想いを簡単に跳ね除けられないんだ。