それでも。

拓斗と花音、2人を交えたことにより、僕の中の汚い不協和音は穏やかな音色に変わった。

「兄さん、もうお肉焼いてもいい?」

野菜を切り終わった拓斗が振り返る。

「ああ、いいよ。ワインの香りを吸い込み過ぎないようにね」

「僕は匂いだけで倒れたりしないよ。花音、焼くまで近づかないでね」

「うんっ」

花音は手を洗うと、僕の背中にくっついて、鼻と口を僕の肩に押し付けた。……これで匂いを遮ろうと?

「ワインは捨てないで取っておいて」

苦笑しながらそう言うと、拓斗も同じような顔をして笑いながら頷いた。

そうして赤ワインに漬け込んでおいた牛肉の塊を、少し危なげな手つきでフライパンへ移す。

「あ、拓斗くん、私も手伝うわ」

そう言って立ち上がろうとする水琴さんだけど。

「水琴さんは休んでいてください」

「大丈夫です、僕に任せてくださいっ」

「せんせー、手の怪我治るまでだめだよ~」

……と、僕たち3兄妹たちから一斉に止められ、「そ、そう?」と戸惑いながら椅子に座りなおした。