叶わぬ恋の相手とこうして向かい合って、何事もなかったかのように過ごすというのは案外難しいものなのだと、改めて知る。

気を抜けば、触れた指先を、その手首を、腕を。捕まえそうになる。

その一方で、今すぐにでも放したくなる。

多分、僕は自分で解っているのだ。もう一度触れたら、自制が効かなくなることを。

幸せを願うと言いながら、それをぶち壊したくなる。

結婚なんかしないでくれと、子どものように喚きたくなる。

そんなことをしたって何も変わらないし、ただ水琴さんを混乱させるだけで、周りの人間にも嫌な思いをさせてしまうかもしれない。

そんなことは出来ない。

僕の理性はそんなことは許さない。

ただ穏やかな幸せを。それだけを願っていればいい。

でも。

……でも、と。

終わらない自問が続いてしまう。


……もう少し器用に、巧いこと自分を制御できると思っていたのだけれど。

そんなに簡単なものではなかった。

常に僕の中で何かがせめぎあっていた。

僕がした選択は思ったよりもずっと辛いものだったのだと、あらゆる場面で思い知らされる。