西坂に礼を言うと、水琴さんを下がらせて、ダイニングから持ってきた椅子に座らせた。

「水琴先生、休んでいてくださいね、野菜は僕が切りますから」

心配そうな顔をして、拓斗はそう言う。

「せんせーの代わりに私、がんばるからねっ」

花音はやる気満々に包丁を握り締める。



真剣な顔で黙々と野菜を切る2人の後姿を見ていた水琴さんは、少しほっとしたような顔をしていた。

「だから大丈夫だって言ったでしょう?」

微笑みながらそう言い、救急箱から絆創膏を取り出す。

「……本当ね」

ふふ、と水琴さんも微笑んでくれた。

細い指に絆創膏を巻くために、僅かな間触れ合う指先。

それだけで胸の奥がちくりと痛む。

顔も見れず、息も出来ないくらいに苦しくなる。

僕がこんな風になるなんて今まで考えたこともなかったな、と自嘲気味な笑みが漏れた。