「メリークリスマース!」

元気な声に驚いて目を丸くすると、水琴さんは満足そうに微笑んだ。

「ビックリした?」

「ええ……」

「ふふ、良かった。たまには和音くんを驚かせてみようと思って。いつも澄ました顔なんですもの」

なんて笑われるけれど。

僕はいつも貴女には驚かされていますよ、と苦笑した。



部屋に上がり、水琴さんに続いてリビングへと入ると、ふわりと甘い香りに包まれた。

「あれ……もう何か作りました?」

正面にあった観葉植物が大きなクリスマスツリーに変わっているな、と思いながらキッチンへ向かおうとすると。

テレビ前のテーブルに、ご馳走がずらりと並んでいた。

その中心には、チョコレートクリームがもこもこ山になっている、ケーキらしきものが……。

「まさか、水琴さんが作ったんですか?」

ブッシュ・ド・ノエルらしい、もこもこチョコクリームの山。太さが違うローストビーフ、魚介類の乗せ方が異常に下手なカナッペなど……とにかく不恰好な料理が並んでいる。

これは水琴さんの手作りだ。そう一目で分かる。

「実はね、今日はお料理を教えてくれる和音先生にちょっとお礼をしようと思って……作りました」

座って、と言いながら水琴さんはキッチンへ行く。

グラスを手に取り、飲み物を用意しているようだ。