水琴さんに何かプレゼントを。

そう考えてみたのだけれど。

……決まらない。

装飾品の類は選びやすいのだけれども、生徒である中学生の僕から贈るものとしてはどうなのか。

ヴァイオリンに関するものならば、譜面を止めるクリップや写譜ペンあたりか。しかし実用的過ぎるものをクリスマスプレゼントにするのはどうか。

では、部屋に置く小物はどうだろう。

花束などは……また『気障だ』と笑われるのかもしれない。

……分からない。

何を選んだら喜んでもらえるのかが。


クリスマスまでのそう長くはない期間、僕はずっとプレゼントで悩んでいた。

それでも決まらなくて、結局いつもの、無難な、そんなものを選んだ。



クリスマス当日は朝から曇り空で、雪が降りそうなくらいの寒さだった。

白い息を吐き出しながら水琴さんの部屋を訪ねると、玄関ドアにピンクのブリザードローズを使ったリースが飾ってあった。

お淑やかだけど、少女めいた愛らしさも感じさせるそれは、水琴さんらしいチョイスだと思った。

思わず微笑んで、玄関チャイムを鳴らす。

すると。

扉から顔を覗かせた水琴さんが悪戯っぽく微笑んだのと同時に。

パアーン、と。

紙ふぶきが飛んできた。