幸いなことに、マンションの近くにあるコンビニは医薬品取扱店だった。

湿布と包帯、アイスノン、あとは飲み物を買って、また走って戻る。

ベッドの上の水琴さんは、相変わらず静かだ。

「水琴さん、足、手当てしますよ?」

一応声をかけ、痛々しいほどに腫れあがった左足首に湿布を貼り、包帯を巻いておく。

応急処置は出来たけれど、骨に異常があったりしたらどうしようという不安が今更ながらに湧き上がってきた。

無理にでも起こして病院に連れて行くべきだろうか……。

しかし僕ひとりでは判断が出来ない。

誰かに相談を……と思ったとき。

僕はやっと、西坂の存在を思い出した。

そういえば水琴さんに会う前に、一度西坂に連絡をしたきりだった。

もっと早くに彼の存在を思い出していたなら、もっとうまく対処出来たかもしれないのに……と思うと、頭の回らない状態であった自分が愚かしく思えてくる。

西坂は今、どうしているだろうか。

実直な彼のことだ、『ちょっと待ってて』という言葉に従い、そのままあそこで待機しているのかもしれない。

連絡を入れないとまずい、とズボンのポケットに手を伸ばして、あるはずの携帯電話がないことに気づいた。

「え……」

思わず振り返る。

ぱたぱたとシャツやズボンのポケットを叩いてみたけれど、どのポケットにも入っていなかった。