見れば、僕たちから顔を逸らし、口元を押さえて必死に笑いを堪えている様子。
僕はこの日初めて知った。
僕たちは世間知らずだ、と。
30分ほど電車に揺られた後、バスに乗り換えて更に30分。
市街地を離れ、眩しい日差しに濃い緑がキラキラと輝く細い道を緩やかに登っていった先で、水琴さんは降車ボタンを押した。
市街地よりも標高の高いこの場所は、バスから降りた途端に湿気の少ない爽やかな風で僕たちを迎えてくれた。
見渡す限り広がるのは、欧風の街並み。
観光地なのか、家族連れやカップルたちが目の前を行き交っている。
「さあ、行きましょう」
先に立って歩き出す水琴さんについていくと、街の入り口に緑のアーチが現れた。
『Basilica di Santa Maria』と、クセのある文体で書かれた看板がついている。
──イタリア語か。
サンタマリア大聖堂、と読める。
「……教会があるんですか?」
「そう」
肩越しに振り返った水琴さんは、ふわりとした笑みを僕に向けて頷いた。
「教会……」
段々になっている欧風の街並みの一番奥に、確かに青い尖塔が見える。そこに下がる、大きな鐘も。
まさか、鐘の音を聞かせるために?
問いかけようとする背中はどんどん遠ざかっていく。慌てて足を速めた。
僕はこの日初めて知った。
僕たちは世間知らずだ、と。
30分ほど電車に揺られた後、バスに乗り換えて更に30分。
市街地を離れ、眩しい日差しに濃い緑がキラキラと輝く細い道を緩やかに登っていった先で、水琴さんは降車ボタンを押した。
市街地よりも標高の高いこの場所は、バスから降りた途端に湿気の少ない爽やかな風で僕たちを迎えてくれた。
見渡す限り広がるのは、欧風の街並み。
観光地なのか、家族連れやカップルたちが目の前を行き交っている。
「さあ、行きましょう」
先に立って歩き出す水琴さんについていくと、街の入り口に緑のアーチが現れた。
『Basilica di Santa Maria』と、クセのある文体で書かれた看板がついている。
──イタリア語か。
サンタマリア大聖堂、と読める。
「……教会があるんですか?」
「そう」
肩越しに振り返った水琴さんは、ふわりとした笑みを僕に向けて頷いた。
「教会……」
段々になっている欧風の街並みの一番奥に、確かに青い尖塔が見える。そこに下がる、大きな鐘も。
まさか、鐘の音を聞かせるために?
問いかけようとする背中はどんどん遠ざかっていく。慌てて足を速めた。


