冷えすぎの車内に少し眉を潜めながら、空いている座席に並んで座る。
電車が走り出すと、目の前にある商業施設の並ぶ景色が真横に流れ出した。──珍しい光景だった。確かに車から見るものとは、なんだか違って見える。
「お兄ちゃん、あれなぁに?」
と、花音が指差したのは、天井から吊り下がる、白い吊り輪だ。
「ああ……立っている人がつかまるところだよ」
「私、あんなところまで届かないよ?」
「そうだね……。そういうときは、どうするのかな?」
はて、と考える。
車も揺れるけれど、電車は更に硬くて激しい揺れのように感じる。
テレビでは鮨詰めのように人が乗っている映像を良く見る。
しかし見たところ、そんなにつかまるところはないようだし、これでは揺られたときに倒れてしまうのでは?
その疑問が解決しないうちに、花音の隣に座る拓斗が隣の車両を指差した。
「あっちの車両の方が揺れて見えるのはなんでだろう?」
「え?」
「ほら」
言われるままに見てみれば、確かに、隣に見える車両は右に左に、だいぶ揺られていた。
「ああ……レールを走っていくのがあの車両の方が先だから──」
と言っている横で、僕の肩に触れる水琴さんの肩が、小刻みに揺れていることに気づいた。
電車が走り出すと、目の前にある商業施設の並ぶ景色が真横に流れ出した。──珍しい光景だった。確かに車から見るものとは、なんだか違って見える。
「お兄ちゃん、あれなぁに?」
と、花音が指差したのは、天井から吊り下がる、白い吊り輪だ。
「ああ……立っている人がつかまるところだよ」
「私、あんなところまで届かないよ?」
「そうだね……。そういうときは、どうするのかな?」
はて、と考える。
車も揺れるけれど、電車は更に硬くて激しい揺れのように感じる。
テレビでは鮨詰めのように人が乗っている映像を良く見る。
しかし見たところ、そんなにつかまるところはないようだし、これでは揺られたときに倒れてしまうのでは?
その疑問が解決しないうちに、花音の隣に座る拓斗が隣の車両を指差した。
「あっちの車両の方が揺れて見えるのはなんでだろう?」
「え?」
「ほら」
言われるままに見てみれば、確かに、隣に見える車両は右に左に、だいぶ揺られていた。
「ああ……レールを走っていくのがあの車両の方が先だから──」
と言っている横で、僕の肩に触れる水琴さんの肩が、小刻みに揺れていることに気づいた。


