今まで、電話が架かってくるなんて感じた事など無い
なのに
この日は、ほぼ確信していた
合唱部の活動を終え、買い物をするわけでもなく
どこかのお店に入ってお茶をするわけでもない
二人とも小遣いは限られてるし。
なにせ私は、毎日200~300円くらいしか持ち歩いてない
そんな私達が時間を潰すと言えば、駅でひたすら喋り続けるだけ
話が尽きる事無く2時間以上も立ったままで話せる私たちって……
16:00を過ぎた
もう学生服姿の人は見かけなくなった
そろそろ帰らないと心配するだろう?
「………長い時間足止めさせて、ごめんね」
「ウチは両親働いてるから平気だけど、サヤちゃん家の人心配するんじゃない?」
「そうかもね。ありがとね」
「いえいえ♪ こんな事でお役に立てるなら何時だって付き合うよ☆」
「ありがと。じゃ、また月曜日ね」
「うん。またね~☆ あっ、電話が本当にあったら教えてね~」
悩みを楽まないでよ
「あったらね」
引きつった笑顔で答える
駅でそのまま彼女と別れ、重たい足を引きずりながら千代田線に向かう
電車を降り、チャリを漕ぐのもまるでスローモーションで映しているかの様
「ただいま~」
「遅かったね」
「うん。鎌田ちゃんと喋ってた」
「お喋りもいいけど程々になさい?」
「は~い」
結局この日は、寝る頃になっても電話は掛かってこなかった
気のせい
……だったのかなぁ?


