また勝手に代わった


 『もしもし』


 「ハイ」


 『本当に好きな人も付き合ってる人もいないの?』

 相手は、もう涙声なんかじゃない


 「いないよ」

 今言えるわけないよ


 『ならいいじゃん……何が駄目なの?』


 「ですから、名前を言えないような人とはお付き合い出来ません」


 『じゃ……名前当ててよ!!』
 
  何それ?


 『俺、背も高いし……自分でもカッコイイと思うんだけど……』

  すごい自信過剰ですこと


 「………」


 『お金だって不自由しないから、何処にだって連れて行って上げられるよ』

  って中学生でしょ?


 「………」

 それだけで分かるわけないよ


 『もう一つヒント。オレ、佐山さんと一度だけ席が近くになった事あるんだけど』

 一度だけってのは荻野くんだけなんだけど……?

 なんとなく絞れてはきたけど確信はない


 「分かりません。そんな謎掛けばかりするなら切ります!!」


 『待って、切らないで!!』


 「アヤコ~、ご飯よ~」


 タイミングがいいのか悪いのか、下からお母さんの呼声


 「は~い」

 受話器を片手に答える