まだ幼い少年は自分の身に起きた出来事が理解できていなかったのか、呆然自失といった風に擦りむいた膝を眺めていたが、次第に大粒の涙を流しながらワンワンと大きな声で泣き始めた。
先輩が「頭を打ったか?」と優しい声色で尋ねると、少年は泣きながら首を左右に振る。
良かった。頭を打ってないなら一先ず安心だ。
見た所擦りむいたのは肘だけで、自転車に挟まれた足は少し汚れているだけで傷はない。
チラッとストーカーもどきも確認したが、まああいつは大丈夫だろう。意識があれば問題ない。
「先輩、絆創膏とか持ってますか?」
「持ってはいるがまずは消毒をしないと。近くに公園があったはずだ。そこで傷口を洗おう」
俺はケータイを取り出して、GPSを活用し周囲の地図を確認する。
公園は目と鼻の先か。GPS様々だなほんと。
「先輩、場所がわかりまし……」
報告しようと思ったら、冬月先輩は未だに尻もちをついたまま座り込んでいるストーカーもとぎの元に歩み寄っていて、上からそいつを見下ろしていた。



