「……あれ?」
ポンポンッと叩いてみるが、掌からはなんの感触も伝わって来ない。
そ、そんな馬鹿な。だってちゃんと確認して、忘れるなんてことは……。
「動揺するな。ジャッジが見ている」
「え?」
「学校を出た瞬間から、各学校ごとにジャッジが付いて回る。少しでも動揺した姿を見せれば芸術点で減点されるぞ」
ジャッジが付いて回るって、そこまで厳格なルールだったのか。
関心と驚き。それと同時に、なぜ俺のパスモがないのかという疑問と不安が沸き起こる。
「宝具の盗み人だ」
俺が質問をする前に、先輩が答えを口にした。
「奴のスキルは盗み。帰宅に必要なアイテムを、誰にも悟られぬよう盗みだすことから“宝具の盗み人”という二つ名がついた」
「盗み出す?」



