「……それがお前の帰宅道か?」


「はい。俺が帰宅する理由、俺だけの帰宅道です!」


一度離れてしまった家族が元に戻るのは、俺が考えている以上に難しいことかもしれない。


そもそも父さんが刑務所から出てきたとしても、家に帰って来るとは限らない。


全然反省してなくて、また同じ過ちを繰り返すかもしれない。


それでも俺は信じたい。


バツが悪そうな顔をしながら、小さな声で「ただいま」と言う父さんを。


家族の元にただいま。家族の元におかえりなさい。


帰宅の言葉を言うために、俺は家に帰る。待ち続ける。


俺達が家族であるためには、母さんとの思い出がたくさん詰まっているあの家じゃないと駄目なんだ。


「くだらないですか?」


「いいや」


先輩は即答し、俺が見た中で最高の笑顔を作り出した。