「では急ごう。マンションまでもう少しだ」


「はい!」


犬、カラス、アルパカと、富士の野生児の恐ろしさを味わった。


でも奴が本気を出したら、先輩でも対処するのは難しかったはずだ。


事故に見せかけて、動物たちを使い襲わせることだって出来る。


それだけの力と能力を持っていながら、強硬な手段を使わなかったのは、それが奴の帰宅道なのだろう。


いや、だからこそ富士の野生児は帰宅神の称号を手に入れ、帰宅神からも慕われているんだ。


「少し早足で行くぞ。なにしろ奴は馬に乗っているからな」


「そうですね。急ぎましょう」


俺達は再び歩き出す。


二人の愛の巣へ向かって……なんちって。