「いい返事を待ってるからね」


女の子は俺の姿を一瞥すると二コリと会釈して、その場から去って行った。


入部希望者ってわけではなさそうだ。一体先輩となんの話をしてたんだ?


「遅くなりました。えーと、さっきの人は?」


「女子サッカー部の三年生だ。私のことを勧誘しに来たらしい」


「勧誘?」


「私の身体能力を買ってくれるのは嬉しいのだがな。正直有難迷惑だ」


先輩は冷たく言い放つと、困ったように小さく溜息をついた。


実はあれから独自の情報網を駆使して先輩のことを色々調べたのだが、冬月美鈴という人物は超人であることが判明した。


成績は常に学年トップ10。中学時代に空手の全日本選手権に出場。同年代では負けなしの天才少女だったのだ。


それがどうして帰宅部なんかに入ってしまったのだろう? 謎だ。謎すぎる。


席に付くよう促されると、先輩はお菓子とお茶を用意してくれた。