などと不埒な妄想を繰り広げていると、先輩も空を見上げながら「付けられているな」と物騒なことを口にした。
「付けられてるって……」
辺りを伺うが、それらしい人影は見当たらない。
職業病で人の気配には敏感な方ではある。それでも俺達を付けている怪しい人物や気配は感じ取れない。
気のせいじゃないか一瞬疑ったが、
「空だ」
顔を上げて、その言葉の意味を理解した。
トンビが飛んでいる。
さっき見たトンビが、未だに俺達の頭上をグルグルと周回していた。
同じところをずっと飛んでいるなんてことはあるのか?
そもそもこんな都会でトンビが飛んでいることが不思議な出来事だ。山とか海とかにしかいねぇぞ普通。



