警戒が興味に変わった双眸を見逃すはずがなく、俺はタッパーの蓋を開けた。
犬の嗅覚は人間の千倍以上。
鼻をピクピクと動かしてその匂いを確認すると、ピンッと張っていた尻尾がゆらゆらと左右へと動き始めた。
「おら! 食い散らかせ野良犬ども!」
中身をぶちまけると、野良犬達は一目散に駆けて行く。
それもそのはず。タッパーに入れていた物は鳥もも肉。
今朝スーパーで仕入れた新鮮なお肉である。
調教済みとはいえ、そこは元野良犬。
野生の本能に抗えるはずもなく、地面に撒かれたもも肉を取りあっている。
「今の内に行きましょう」
夢中になっている内に、こっそりと正門を通過。文字通り第一関門突破だ。
だが問題はここからだ。



