「帰宅という言葉の意味がわかったようだな」


ずっと俺の言葉に耳を傾けていた先輩が、徐に口を開いた。


「帰宅?」


「帰宅という言葉は“自宅に帰る”という意味ではない。“家族の元に帰る”という意味だ。そういう意味では、この大会は全く持って意味がない。誰もいない空虚な一室に帰ることは、帰宅とは呼ばないからな」


「……帰宅神がそんなこと言って大丈夫なんすか?」


「帰宅の意味がわからないようでは、帰宅神は名乗れない。逆に言えば、帰宅の本来の意味を知った者だけが帰宅神を名乗ることが出来る」


先輩が俺の頭をポンッと撫でた。


まるで子供をあやす様な手つきと微笑みに、顔が一気に熱くなる。


「君は家族想いの優しい男だ」


「っや……全然そんなことは……」


「だが本当に父上のことを想うなら……いや、すまない。忘れてくれ」