ガシガシと頭を掻いて一旦整理。


不幸自慢をしたいわけじゃない。先輩に同情してもらいたいわけじゃない。


幼稚で馬鹿げたこの答えを、誰かに正当化してもらいたいんだ。


「……なんて色々理由をつけたけど、結局の所家に帰らない理由は寂しかっただけなんですよね。一人ぼっちで寂しくて、ただいまという言葉も返ってこないし、お帰りなさいという言葉を言う機会もない日常が、凄く寂しかったんです。
まして家族の面影が残る我が家ですからね。忘れたくても忘れられない。だから家に帰るのが……いいえ、一人になるのが嫌だったんです」


一人ぼっちと一人暮らしは、全く違う。


高校を卒業したら一人暮らしをしたいという友人がいたが、それは家族という帰る場所があるから一人で暮らすことが出来るのだ。


いざとなったら助けてくれる存在が居る。帰る場所がある。その安心感があるからこそ、一人暮らしをしたいという余裕と願望が生まれる。


この数カ月で嫌というほど思い知った。


俺には頼れる存在も、家族という帰る場所もない。


だから一人が寂しくて、怖くて、不安で、家に帰ることが出来なかった。