家の事情を知っているのは、極一部の教師だけ。
生徒には絶対口外しように口封じをしていたのに……いや、先輩だから話したのか。
帰宅部という変な部活に所属しているが、先輩に対する教師陣への信頼はかなり厚い。
そこで先輩に白羽の矢を立て、俺の問題が少しでも和らぐように手を回してくれたんだろう。
余計なお世話だがな。
「関東大会が終わったら一度腰を据えて話をしようとは思っていたんだ。私では頼りないかもしれないが、誰かに打ち明けることで少しでも気が楽になるかと思ってな」
椅子に座っていた先輩が立ち上がり、俺の隣に腰を下ろした。
密着した身体。至近距離にある顔。
こんな状況なのにドキドキしてしまうのは男の性。仕方のないことだ。
……先輩になら話していいかな?
ここ数ヵ月先輩と一緒に行動して、この人は信用に足る人物であることはわかっている。
じゃなきゃ、帰宅部なんて怪しい部活動を続けていられるわけがない。



