ふと外を見ると、もう世界はオレンジの炎に包まれ、ゆっくりと一日の終わりを告げていた。
いつもの教室。
いつも通りの光景。
私は、「いつも通り」の中でしか生きられないような、そんな人間。
特別でもなくて、別段誰かに好かれるわけでもなくて。
考えても無駄かな。

ゆっくりと席を立ち、教室から出ようとしたその時、ふと気がつく。
「あぁ、もう今日で終わりなんだっけ。」
思わず口に出てしまった。それは黒板に書かれた(卒業おめでとう!)の字を見てしまったからだ。

どうしよう。「いつも通り」が消えちゃう。

途端に、この三年間の自分が消えてしまうかのような不安が襲ってきた。
次に待っているのは高校生活だ。新しく自分を作らなければ。

黒板から逃げるように早足で下駄箱に行き、靴を変えて帰路につく。

新しい三年間、か・・・

少しでいいから、いつも通りでないような。
そんな自分が欲しい。
もうあの黒板から逃げなくていいような。

そう思いながら家に向かう足は、少しずつ希望に向かう力がついた気がした。