「実は、私も……」


「俺も見た!」



1人が言うと、周りの人は次々に見たと口にした。


今まで威勢の良かったヤツも、こんなに目撃者が居れば何も言えなくなっていた。



『……と言うことだから諦めな、おっさん。』



「………」


男はうなだれたように力を抜いた。




そんなとき、バスは次のバス停に着くことを知らせる。



とりあえず、警察に引っ張っていかねぇと……。


俺は力を失った男を乱暴に立たせ、
出口へと引っ張っていく。




その時、痴漢にあっていた彼女の姿が目に映った。



『ねぇ、君?
一応、一緒に来てくれるかな?』



「あっ!はい!!」



彼女は慌てたように返事をして、
俺について来た。