「それにしても、ようやくあの反物が陽の目を浴びるときが来たんだな、兄貴。」 「あぁ。」 「正嗣の旦那、嬉しそうに反物選んでた光景が今でも思い出されるっすよ。で、旦那は?」 「親父は、今年の初めに亡くなりました。」 そのことを聞いて、空我の顔が少し寂しそうになっていくのに椿には見えていた。 その時、空我から思わぬことを耳にする。