「椿・・・。」 「大丈夫ですか?緑涼さん。」 「あぁ。」 「本当っすよ、兄貴。」 甚平姿の男が緑涼に肩を貸す。 「椿、こいつがさっき話してた知り合いだ。」 「はじめまして。織物問屋染井(おりものどんや・そめい)の頭(かしら)やってます空我っす。よろしく。」 そういうと、空我は左手を差し出した。 その手の爪は、染物の色で染まり、指の付け根はたこがいくつも出来ていた。 「春河椿です。よろしくお願いします。」 「おう。」 そういうと、空我は笑顔でそう答えた。