アンジュエールの道標


金属音は近づいて……、

それからゆっくりと遠ざかっていった。

そして、彼女はその背中を見送る。


「いつまでそうしてるの?」

「……」


いつまで。

もしかして、彼に気づいてもらえるまで?

声を掛けたいのに、掛けれない。

彼を目の前にすると声が出ない。

ううん、指先ひとつ動かすことができない。

あの背中を見ると泣きたくなってしまう。