涙が少し出そうになったのを

必死にこらえて誰も居なくなった寮に戻った。


息吹は私の為に最後まで残っててくれた。

でも、そんな息吹ももう出発の時間になった。


私は息吹から離れてにっこり笑った。


「じゃあ心愛、僕も帰るね。
本当はここに残りたかったんだけど…」


「うん、楽しんできてね。」


私は手を振って後ろを振り返った。

でもその時だった………


突然、息吹が私の腕を掴んだ。


「心愛、包帯取れかけてる……」


息吹が私の足元に触れようとして

しゃがんだけど私は足をふと後ろに下げた。


すると、息吹はすこしだけ驚いた顔をして

しゃがんだ体制で私と目を合わせた。


「ごめん…触られるの嫌だった?」


息吹はあたしから離れて立ち上がった。


ごめん…違うよ。

違う……


「サポーターにしたら?持ってるからあげるよ」


息吹はカバンからサポーターを取り出して

くれたけど私は小さく首を横に振った。


「ううん。これでいいの。」


何でかな……?

今だけはこの包帯を外したくなかったの…


「瞬が帰って来たら包帯の
巻き方教えてもらおうと思って…。」


私がそう言うと、息吹は少しだけ悲しい顔を

して、私に小さく笑いかけた。


あれ………?


「おーい、息吹ーっ!一緒に帰る約束
しただろー!早くしねーと先に帰んぞ!!」


少し先から息吹を呼ぶ息吹の友達の声。

息吹は友達に向かって手を挙げて、


「分かったっ!!それじゃっ…又ね、心愛。」


と言って、手を振りながら駆けていった。