「あれ…」


開きっぱなしだった教室のドアから、先程教室から出ていったはずの黒河君が入ってきた。
その後ろには森野君と結城君もいて、三人は揃ってビニール袋をぶら下げている。


「黒河…君?学食行ったんじゃ…」

「あー…、皆でお昼食べようって天と透が言ってたから、売店いってた」


右手に持っていたビニール袋をあげて見せて、自分の席に腰かける。
それに続いて、森野君と結城君も近くの椅子に腰かけた。


「まぁ、氷城先輩と竜胆先輩は既に食べ始めてたから今回は別だけどねー」

袋からサンドウィッチを取り出し、森野君は笑う。
そして、私の隣にいる一実に気付いて「初めまして」と笑んだ。

「森野 天です。女の子はこの学園少ないから、貴女の名前は知ってるよ。関さんだよね?宜しく」

「俺は結城 透、宜しくね~」

「どうも。…あんたら、生徒会?」


メロンパンを一口頬張り一実が尋ねれば、よくわかったねーっと、森野君は笑う。
何故なら、昨日の入学式では、生徒会長である氷城先輩しか挨拶していないからだ。



「さっきまで図書室でサボってて、そこで話してるの偶々聞いただけなんだけど…
生徒会役員は全員顔が無駄に整ってるって。昨日今日見ただけだけど、あんたらくらいだよ、三人揃ってそんな綺麗な顔してんの。」

「ハッキリいうなぁ、一実ちゃん。」

「顔だけで選ばれたんじゃ?って話しも聞いたけど」

実際どうなの?
と、一実が問う。それには私も少し興味はあった。

「……」

「やっぱりまだそういう人もいるか、仕方ないけど。…大丈夫だよ、僕らはちゃんと生徒会長である氷城先輩に能力で選ばれたから」

ニコッと笑う森野君。
その横で頷きながら、結城君が口を開いた。

「その証拠に先生に聞けば分かるけど…、俺達三人は中学の3年間の成績1位~3位独占してっから」

因みに1位はアイツ。
そう言って指差されたのは黒河君。

「へぇ…」

「(黒河君…頭良いんだ)」

「授業中寝てるのに、マジ不思議だよなぁ…」

黙々とおにぎりを頬張っている黒河君を見やりながら、結城君は焼きそばパンをパクつく。
彼の意見に私も同感だ。



そんな会話をする彼らを眺めながら、穏やかな時間が過ぎていく。

そして、他の生徒が続々と戻ってきた頃、森野君と結城君は自分達のクラスへと戻っていった。