「……」
私もとりあえず席に座る。
左隣の席の女の子は、来ていなかった。
午前中の授業が終わり、昼休み。
教室の大多数の生徒が学食へと向かう。
その最中、私はお弁当箱を取り出した。
下手に教室なんか出たら、男の子ばかりになってしまう。
そう理解しているがゆえに、そこから出る気にはとてもなれなかった。
「あれ…、お弁当つくったの?」
「ぅ…うん…。学食、行きたくないから…」
そう言って頷けば、黒河君は「そっか」といって、少し考えるそぶりを見せてから、教室を出ていった。
そして、その約五分後。
ガラガラ…
再び開いた教室のドア。
誰か戻ってきたのかとチラリと音のした方を見やれば、そこには今日初めて見る人間がいた。
「ぁ…」
左隣の席の女の子だ。
確か…、名前は関 一実(セキカズミ)…だったろうか。
恐い女の子という印象はあるものの、自分以外では学園唯一の女の子。
とりあえず、名前は覚えていた。

