立食パーティーの中で、
健さんの腕を組んで、
これ以上の無い笑顔の立花さん。


なのに健さんの表情は、
今まで以上に目が鋭く、
見ている私の心まで、
凍らせてしまう顔になっていた。


｛ああ。

やはりあんたがいないから、
あいつはあんな顔しか出来ない。｝


「雛子さん。」


最近出て来なかった雛子さんが、
いきなり出てきて驚いた。


｛何グズグズしているの？

あんな女に健を取られて、
本当に心から喜んでいるの？

苦しいから悲しいから、
涙を隠そうとしても、
無駄に決まっているわ。

悲劇のヒロインの演じるには、
愛されて助けてくれる
王子様がいないと。｝


私は悲劇のヒロインを
演じてはいないけど、
いつの間にか自分でそう思うように、
心の中で呪文を唱えていた。