自宅につくと、要はインターネットで二階堂中学と陸貝高校を調べた。『南春枝』でも
検索してみたが、ヒットはなかった。

本音を言うなら、学校のデータベースなどにハッキングして南春枝の顔や住所を調べておきたかったのだが、帰り道の途中であかねに「違法捜査は――?」とクイズのように聞かれ「ダメよ☆」なんてノリで答えてしまったがために「じゃあ、今回は違法はなしよ」と念を押されてしまったため、調べられない要なのであった。

「あ~あ、ノリであんな約束するんじゃなかったぁ」

そう呟きながら、心の中でふと思う。

(……あかねも段々あたしの扱い、なれてきたか――?)

とりあえず調べて分かった事は、二階堂中学も陸貝高校も、この街から遠く離れた県外にあること、もしも行くとしたら、電車で4時間はかかる事だけだった。

「クソぅ」

要は小さくそう悪態をつく。
そこに、玄関のドアが開く音が聞こえた。と、同時に想一郎の低い声が響く。

「ただいま~」

要はパソコンデスクから離れると、自分の部屋のドアを開けて覗いた。
すると、想一郎が靴を脱いで揃えているところだった。

「おかえり~」

要が部屋のドアを閉めながら言うと、想一郎は鞄からファイルを取り出して掲げた。

「おみやげ~」

言って、要の頭にファイルを押し付ける。

「むう」

少しほっぺたを膨らませながら、ファイルが落ちないように押さえつけて受け取ると、要はファイルの中身を取り出した。
その紙の印刷面にはこう書かれていた。

――指紋、および血液検査結果――

「おお~!!」
早速要は嬉々としながら次のページをめくった。
そこには、要が思ったとおりの人物の名前が「一致」となっていた。

――血液・日吉淳子・99%一致――

(やっぱり、あの血は日吉先輩のものだったのね)

要は確信を胸にしまいながら、次のページをめくる。
するとそこには指紋検査結果の文字があった。要は滑らせるように文字を読んでいく。

――吉原要・95%一致――

――藍原美奈・99%一致――

そこまで読んだところで、要の目が留(と)まる。次の人物名に、時を奪われた。
しばらく書類に目を釘付けにして動こうとしない妹を気遣うように、声をかける想一郎をことごとく無視して、要は口の端を歪めた。

――やっと、尻尾を掴んだ!

(……あとは、決定的な証拠、証人がいる。これは是が非でも、南春枝に会ってみなくちゃね!)