「いいかげんにして欲しいですね!! 沢松さん! 私言いましたよね!? ドッペルゲンガーか何か知りませんけど、事故にあった子の話はするなと! 生徒会としての示しがつかないでしょう!!」

「はい、すみません」

あかねが頭を下げるのを待たずに三枝は歩き出した。
その背後から要の声がかかった。

「三枝先輩! これは殺人事件なんですよ。協力して頂けないなら、貴女を犯人候補として残しておきますよ?」

三枝は半分振り返り、少し戸惑ってから吐き捨てた。

「くだらない!」

そのまま歩き出そうとしたが、その足を止め、今度も半分振り返りながらとんきょうな声を上げる。

「そうだ、吉原。貴女方のクラブの道具、生徒会長や、先生と相談した結果、あれ(双眼鏡)だけになりました」

そう言うと、眼鏡の奥を鋭く光らせ強い口調で言い放つ。

「ご了承を」

「ええ~!? なんでぇ~!?」

要の落胆に満ちた叫びを背に、三枝はその場を去った。
三枝の去った方向を見つめながら、要は残念そうに独りごちた。

「ふう……収穫なし、かなぁ」

「だな。っていうか、お前何頼んだんだよ?」

秋葉が質問すると、要は落胆の色を隠さずにガクリと首を落ち込ませた。

「うう……色々だよぅ……。盗聴器とか、監視カメラとか、赤外線カメラとか、盗聴器を発見する道具とか、指紋採取キッドとか。あと、高性能なパソコン」

「……そりゃ、お前、通らねぇよ」

秋葉が呆れを通り越してひいていると、あかねが声を上げた。

「そんなことより! 私の立場が危うくなっちゃったじゃないの!!」

と文句を口にしたが、誰も聞いていなかった。そこに、何かを考えていた由希が、指をいじりながら、オズオズと声を上げる。

「あの……三枝先輩、一瞬、温室の方、見たよね? それに、会議の時の事聞いただけであんなに、怒らなくても良い、のにね」

「それもそうだね。……ふむ。怪しいな」

「でも要、あの人真面目だし、あの話は禁止されてたのに話したから怒ったんじゃない?」

「けどさ、それだったら高村先輩の名前出した時点で帰られてたんじゃね?」

「確かにそうだね。秋葉の意見ももっともだと思う」

「だけど、高村なんて名前いくらでもいるし……!」

「あかね、何でそんな必死に庇うの?」

「なんでって、仲間だし、そんなコトする人には見えないもの」

「いい~や、あ~ゆうタイプは自分の名誉、地位を守るためならどんな犠牲も厭わないってタイプだな!」

「秋葉に何がわかるのよ!」

「なんだよ!?」

秋葉とあかねが睨みあうと同時に、チャイムが鳴った。

4人は慌てて教室へと急いだが、由希だけは温室が見えなくなるまで温室から目を離さなかった。