「俺らを騙そう何て百年はえぇぞ!」

「秋葉も気づいてたの?」

意外だと言うように要はそう言ってマジマジと秋葉の顔を見た。

「おうよ。昨日帰ってる時に何か変だなぁって思ったんだ」

三人に問い詰められて、観念したのかあかねはため息をついて切り出した。

「……思い出したのよ。高村先輩が事故にあった時、あの時間は生徒会の会議の真っ只中だった。だけど――」

そこで一回言葉を濁し、言いづらそうに視線を動かすと、振り絞るようにして吐き出す。

「いなかったのよ。始まる前はいたのに。そして、5時頃戻ってきたの」

「……誰が?」

秋葉が神妙に尋ねると、「ふう」と深いため息をついて名を口にする。

「――三枝先輩」

あかねは「しかも」と付け加えた。

「その日はセミロングの髪を縛ってた。アップにして……」

そこまで言うと、あかねは不安を吹き飛ばすように、笑いながら「まさかとは思うけどね」と付け加えた。

「あの頭の固い三枝弘が会議をサボったか……」

独りごじた要をあかねが見つめると、不安そうに「そうなんだよね……」と呟いた。

「確か三枝先輩は身長160ちょうどだったんだよね」

「要、お前何でも知ってんだな」

呆れまじりに感心して言う秋葉に「まあね」と笑って答えると、秋葉が「じゃあ」と言って単刀直入にズバリと言い切った。

「三枝先輩に直接アリバイ聞きゃあ良いんじゃねぇの?」

「まあ、だね。それが一番手っ取り早いね」

「……うん」

要と由希は秋葉の意見に賛成した。その後ゆっくりとあかねを見つめ意見を待つと、あかねは静かに頷いた。


お昼休み――四人は校舎裏に三枝弘を呼び出した。

呼び出された三枝は訝しげに眉間にシワを寄せて眼鏡をクイッと上げる。

「いったい何のようですか?」

「すみません。先輩」

申し訳無さそうにあかねは軽く頭を下げる。

「まあまあ、そんな恐い顔しないで、ベンチにでも座ります?」

要はそうお気楽に言って、校舎裏にある裏庭の中のベンチを指差した。

この学校の庭は二つある。校舎裏にある裏庭と、校舎から正門へと延びる桜の木が、余す所なく植えてある並木道の左右、桜並木の内側に中庭がある。中庭はよく生徒が利用するが、裏庭はあまり人が来ない。そんな裏庭には古びたドーム型の温室がある。

三枝は何故かその温室の方を一瞬チラっと見て「結構よ」と短く断った。

「んじゃ、このまま話させていただきますね。ズバリ聞きますよ。高村先輩をご存知ですか?」

「……事故にあった子ですね。その子が何か?」

「事故のあった日、会議だったそうですね。事故のあった時間帯、真面目で有名な貴女が会議をサボっていたらしいじゃないですか。何をなさっていたんです?」

それを聞いた三枝はギロリとあかねを睨みつけた。あかねは肩をすくめ、目線を外す。
すると要はあかねの顔が隠れるように、壁際にいた三枝の顔近くに左手を置いた。

「あかねは関係ないですよ~。事件解明のためご協力お願い出来ますよね?」

それを聞いた三枝はムッとした表情を浮かべ、怒鳴り声を上げた。