――翌々日。

「ちょっと耳寄りな情報つかんだよ」

朝の人の少ない教室で要が密かに耳打ちした。
眠たそうに目をこすりながら付け加える。

「秋葉とあかねが来たら部室集合ね」

コクリと由希が頷いた。
あかねは朝礼会議があって今日はまだ教室にはいない。
秋葉は只今部活中だ。

数十分してあかねが扉をあけて「おはよう」と気取って挨拶をした。
他に人がいるからだ。

要が「良くやるねぇ」という表情をすると、それを見てあかねは、顎をクイッと上げた。

「何よ、文句でも?」とでも言いたそうだ。

それを悟ってか要は小さく首を横に振って見せた。
近づいて来たあかねに向って小声で「秋葉が来たら部室集合ね」と言ったら、反撃された。

「何言ってんの、秋葉が来たらすぐにホームルーム始まるでしょ?」

「あっ!そっか」

気づいてポンと手を叩く要を尻目にあかねは「まったく!」とぼやいて肩をすくめる。
秋葉が来てすぐにホームルームが始まり、一時間目の授業が始まった。


休み時間、一時間目の国語の授業が終わると、4人は要に呼び出されて部室にいた。

「で? 何なの? 耳寄り情報って」

「それがさ、高村先輩の事件時の映像を全部見てみたんだけど、上手い具合に高村先輩の友達っていう二人の顔が映ってないんだよねぇ。でもね、ショートの奴とアップの奴の身
長は大体分かったよ。これ見て」

要はそう言いながら、持っていた封筒からプリントされた二枚の写真を取り出した。

「制服はもうバッチリウチの学校でしょ?」

「確かにそうだな」

「うん、そう見える……」

秋葉と由希は制服を確認して肯定したが、あかねは黙って写真を見つめただけだった。

その写真は二枚とも拡大したもので、『高村とショート女』と『高村とアップ女』しか映っていない写真で、どちらも高村が正面を向きショート女・アップ女はカメラに背を向けていた。

「でね。高村先輩は確か、156センチだったのよ。このショート女は高村先輩よりも、20センチ近くデカイ。アップ女は高村先輩より少しデカイくらいね。大体160センチくらいかな。この学校で160の人は結構いるけど、ショートで170センチぐらいの人ってなると、一年だと『村田 和江』と秋葉くらいだね。二年だと『伊藤 百合子』『柿枝 凛呼』『宮野 恵美』三年は『結城 数音』『神城 あすか』『遠藤 那美』『榎木 夕菜』だね」

「ああ、大体そんなもんだよな」

「……そうね」

「あれ? あかねだったら「秋葉もショートよね、犯人なんじゃない?」とかって言うと思ってたんだけど」

予想はずれだと要は驚いた。だがどこか演技くさい。

「私を何だと思ってるのよ?」

あかねは呆れたように言うが、少し覇気が無い。

「……」

探るような要の視線に気づいてあかねは「何よ?」と言った。

「……あかねぇ、なんか隠してない?」

要がそう追究すると、由希も便乗した。

「あかねちゃん、一昨日ぐらいから、元気ないよ、ね?」

「……そう?」

しらばっくれようとしたあかねに秋葉が「おい!」と怒鳴った。