三日後 ―― 放課後・部室

「有力情報ねぇなぁ~」

「隣でぼやかないでよね、秋葉。やる気無くすじゃない。私なんか、こんな事してるのバレたら生徒会からどやされるのよ~!」

「お前の方がよっぽど、ぼやいてんじゃねえか」

秋葉のぼやきはあかねの耳には届かずに、代わりに ガラー という騒々しい音が耳に響いた。

「朗報だよぉ!!」

そう叫びながら、要が勢い良くドアを開けたのだ。

部屋を見渡し、全員がきている事を確認すると、さっきとはうって変わって静かにドアを閉めた。

「聞いて!聞いて!手に入ったわよ、オヤジの電話番号」

「マジで!?」

「本当!?」

「……すごい」

次々と驚きの声が上がり、要は誇らしげに「ふふん」と鼻を鳴らした。

「早速かけようぜ!要、電話番号、何番だ?」

急くように携帯を取り出した秋葉に、要とあかねが「待った!」をかける。

「何でだよ?」

怪訝な顔をする秋葉に「あのね……」と人差し指を突き出してあかねが説明を始めた。

「相手の電話が携帯かナンバーディスプレイだったらどうするのよ? 携帯番号バレちゃうじゃない!」

「そういう事さね。非通知って手もあるけど、それだと出てくれない可能性が高いからね」

「あ!そっか」

秋葉が納得して声を上げると隣で、由希も指を胸の前でいじりながら「そっか」と頷いていた。

4人は学校の公衆電話の前にいた。この公衆電話で話を聞こうというのだ。

「電話は誰がかけるんだ?」

「あたしはあかねにやってもらおうと思ってんだけど」

「私!?」

「うん」

「何で私なの? 要で良いじゃない」

「いや、あたしじゃ無理。あたしは秘密主義者だけど、アンタほど演技上手くないから。すぐバレると思うよ」

言って要はあかねに持っていた紙切れを渡した。それを見たあかねは「なるほど」と呟く。

「そういう事ね! 解った、良いわ」

言って二人はニヤリと笑った。完全に取り残された秋葉と由希は、訳が分からず首をかし傾げた。

   プルルル♪ プルルル♪

コール音があかねの耳に鳴り響く。七回コール音が鳴ったあと、留守番電話に繋がったので、諦めて受話器を置こうとした時、受話器のむこうから『もしもし』という声が聞こえた。

慌ててあかねは受話器を耳に押し当てた。

『も、もしもし!』

思わず声が震えたが、咳払いをして何とか気持ちを整えた。

『あのぅ、新堂勇次さんの携帯ですよね?』

『あ、はい。そうですが』

『あっ!突然すみません。GGFテレビの『朝月ニュース』の者ですが』

『ああ、どうも……何か?』

『以前取材を受けて頂きましたよね?』

『ええ』

『その際に「電車にひ轢かれた女の子は友達と来ていたようだ」とおっしゃいましたよね?』

『ああ、はい。言ったと思いますよ』

『その『轢かれた女の子の友達』の事を詳しくお聞きしたいんですが、よろしいですか?』

『ええ、良いですよ、覚えている限りのことで良いなら』

『ええ、十分です!ありがとうございます。ではお話お願いできますか?』

『ええ。……確か、女の子達は階段の下の、時計の真下らへんで話していたと思います。顔はよく見えなかったんですが、髪型は一本に縛っていたと思います』

『アップにしていたって……ことですか?』

『ええ、上向きに縛っていたと思いますよ、長さはセミロングかな? あと、轢かれた子と同じ制服を着ていました』

『なるほど……。会話は聞こえませんでした?』

『聞こえませんでしたよ。だけど、普通に友達と話してるって感じでした』

『そうですか……。』

『ああ!そういえば――』  

『!?』

 …………

「ありがとうございました。失礼します。」

あかねは浮かない顔をして、受話器を下ろした。

『どうだった?』

秋葉と要が同時に質問すると「それがね……」と考え込むように切り出した。

「オヤジこと、新堂さんが言うには高村先輩と一緒にいた人は、高村先輩と同じ制服姿で髪をアップにして縛っていたらしいんだけど、顔は見えなくて会話も聞き取れなかったって」

「ほとんど収穫ないね」

要が舌打ちをして言うと、あかねは相変わらず浮かない顔をしたまま「そうでもないかも」と言って、こう続けた。

「謎が深まったかも」