腰まである、真っ直ぐに伸びた黒髪が印象的な、17歳くらいの少女はセーラー服を着て、電車を待っていた。

ホームの一番前に並び、黄色い線より少し前に出ている。

彼女はどこか哀しげに、虚空を見つめていた。

自分のした事が正しかったのかどうか、彼女はわからず、ため息をつく。

けれど、彼女は止まる事も戻る事も出来ない事を知っていた。

そんな彼女は突然「ふっ」と自分の身が一瞬浮いた感覚に襲われた。

「ドン」と背中から響いた小さな衝撃音。


――え? なんだろう?


考える間もなく、彼女は地に落ちた。

ジャリっとする手触り、膝の下にあるのは、太陽で熱せられて暖かくなった鉄。


――線路だ。


彼女がホームから落ちた事を自覚した時にはもう、全てが遅かった。

顔をはっとあげた彼女のすぐ目の前に、もう電車の顔があった。



――私……あいつに殺されるんだ。


「――っ」


悲鳴を上げようとした彼女は、声を発する間もなく


     ――絶命した。