そのまま要が家に帰ると、ソファーに青年が座っていた。

彼の名前は【吉原 想一郎】要の兄だ。

要は彼の事を「あに」と呼んでいる。

「あに~。今日仕事は?」

「ただいまが先だろ?今日は非番なんだ」

振り向いた兄は中々の美青年だった。

「何だ、聞いてないよ?ただいま」

「おかえり。だって言ってないもん。せっかくだからビックリさせてやろうと思ってな!帰ってからお兄ちゃんがいたら嬉しくてビックリするだろ?」

「全然ビックリしないんだけど。むしろあにの頭の悪さにビックリ!」

そう返しながら冷蔵庫からオレンジジュースを取り出すと、想一郎はがっくりとうな垂れた。

「なんだよ~!二人っきりの家族なのに、要なんか最近冷たくない?」

「そのシスコンなおしてくれたら、優しくしますよお兄様」

「俺はシスコンじゃないぞ!言っとくけど!要が可愛くてしょうがないだけだから!!」

「……じゃあ、その可愛い妹が彼氏連れてきたら?(いないけど)」

「殺す!!国家権力を持って亡き者にする!」

本気で答える想一郎を呆れてみながら、要はため息をついた。

(この人本当に捜査一課の敏腕なのかなぁ?全然ダメダメじゃん!つかそれがシスコンなんだっつの!!)

心の中で毒づいた要に「あっ、そうだ」と想一郎は話しかけた。

「お前の学校の死んだ子いたじゃん、あの……何だっけ、高橋さんだっけ?」

「高村!で、なに?」

「その高村さんさぁ、事故って警部が判定しちゃったんだけど、俺違うと思うんだよねぇ……」

「なんで?」

「不審な点が何個かあるんだよ。まあ、もう終わったことだけど」

「何であにはそうやってヤル気ないかなぁ?もっと本気出したら?」

「お前だってそうだろぉ?」

「あたしはいつでも本気だよ!」

そういいつつも、飄々としているところとか、いい加減で気まぐれなところとか、そっくりな二人だが、要は絶対に認めないだろう。

「捜査するの?」

「しないよ。断定されちゃったもん。断定して発表しちゃったら、警察は間違ってたって解っても動かないよ。恥かくのお偉いさんだもん」

「ドイツもコイツもなさけないなぁ……」

要はそうぼやいて、ある事を思いついてにやりと密かに笑った。