「音羽。元気出して。
先輩が理由もなしにそんなことするとは思えないし。
きっと何かあったんだよ」

「そうかな……」


音ちゃんは自分のお弁当に視線を落とすと、ため息をついてゆっくりと立ち上がった。


「ちょっと水買ってくるね」


そう力無く笑って、音ちゃんは屋上から出ていった。

バタン、という扉が閉まる音がした後、アサちゃんはポツリと呟いた。


「あれは相当重症ね」

「重症……?」

「恋の病よ、恋の病」


恋の……病。


「まぁ、湊先輩が音羽のことを嫌いになるとは思えないけど」

「音ちゃんって……湊先輩が好きなんですか?」

「そうよ。
一年の頃からずっと」

「じゃあ両想いなんだ……」

「え?」


私が小さな声で呟くと、アサちゃんは驚いたように私を見た。