「あれ……君、どっかで……」
先輩は少しだけ考えた後、あ!と思い出したように声を出した。
「この前ドアを開けてくれた子!」
「はい……そうです」
この先輩……バスケ部だったんだ。
「ここにいるってことは……もしかして入部希望!?
マネージャー希望だったら大歓迎だけど」
「ち、違います!
今日はちょっと……その……用事が……」
「用事?」
私は先輩に音ちゃんのケータイを見せながら口を開いた。
「音ちゃんに届けに来たんですけど……」
「音ちゃん……?
あぁ、音羽ね」
「今どこにいますか?」
「今?今は……」
先輩はひょいっと私の後ろから体育館の中を覗きこんだ。
ちっ……近い。
体育館の中を背にして先輩と向かい合っていた私の目の前にはちょうど先輩の胸のあたりが……。
なぜだか分からないけど……すごく胸がドキドキしてる。
……あのとき、初めて先輩に会った時と同じような感じが……。

