恋愛、友情。ときどき涙。

音羽side


「……行っちゃった」


海斗って呼ぶといつも振り返ってくれた。

面倒くさそうな顔をしながらも、ちゃんとあたしの方を見てくれた。


でも、今は……


……何となく、寂しい。

いつもあたしの傍にいてくれた海斗。

海斗のことなら何でも分かってたつもりだった。


怒った顔も笑った顔も、眠そうな顔も……全部。


でも、綾乃を追いかけてるときの海斗の顔は……


「……初めて見た、あんな顔」


ずっと傍にいてくれた人が離れていく……。

……海斗も同じ気持ちだったのかな。


屋上の柵に寄りかかりながら景色を眺める。


何も変わらない景色。


だけど、あたし達は少しずつ変わっていく……。

少しずつ大人になって、いろんなことを知っていく……。