ふとドアの方を見ると、誰かがこっそりこっちを見てるのが分かった。
あれは……
俺の視線に気がつくと、そいつは慌てて屋上から出て行こうとした。
俺はすかさずアイツの名前を叫ぶ。
「沢木!!」
驚く音羽に、逃げていく沢木。
ドアが閉まって走っていく音が聞こえると、俺も急いで走り出した。
「ちょっ……海斗!?」
後ろから音羽の声が聞こえた。
だけど、俺は振り返らなかった。
いつもなら振り返ってたかもしれない。
そもそも、沢木を追いかけてなかったかもしれない。
でも……なぜか足が勝手に動く。
沢木が走っていった方へ……一生懸命に走ってる。
何なんだよ……分かんねぇよ……。
頭がゴチャゴチャで……でも、足だけは動いていた。
沢木の方へ……向かっていた。

