「ありがとう、助かったよ」

「いえ、これぐらい……」


優しく笑いながらそう言うこの人……。


ドクン……となぜか大きく心臓が跳ねた。

何……?

この感じ……。


開いていた窓から吹いてきた心地よい風に目の前の男子生徒の少し長い茶色い髪が少しそよいだ。


「ヤッベ……もうこんな時間」

「え?」

「助かったよ、じゃあ!」


男子生徒は軽く片手を上げるとそのまま廊下を勢いよく走っていった。


あっという間に見えなくなった背中……。


でも、私はずっと男子生徒が走っていった方を見つめていた……。


よく分からない気持ちを抱えたまま――