「……幸せなんて、僕はいりません」
いつもよりどこか低いトーンの声。
私は、この2人のことをよく知らない。知った方がいいのか、それとも知らない方がいいのか。それすらもわからないなんて、主失格かな……。
本当なら、踏み込みたい。理解したい。もっともっとよく知りたい。けどこれは私個人の要望で、2人はにとっては迷惑かもしれない。
シアンなんかは常に必要以上に近づくなってオーラ出してるし。ティスなんかは割りと親しみやすいタイプだけど、それでもやっぱりそうなんだよね。うーん……。
考え事をしていたら、段々と辺りが賑わってきた。景色が緩やかに変わっていき、やがて商店街に出た。沢山テントに色々な商品が並んでる。売り捌く人達の声がすごい。
「わっ」
沢山の人が往来する中で、誰かとぶつかってしまった。
「す、すみません」
「いーえ、こっちこそ悪いな。気ぃ付けろよ、ちっこいお嬢ちゃん」
ち、小さいは余計だ、このっ!……ん?この人、黒髪、黒目、黒い肌に黒い服、黒い靴に黒いネックレスて、何それ!?究極の黒好き?
「ふぉ?」
今度はくいっと手を引かれた。手を引いたのはティス。
「お嬢様、手を繋いでましょう。迷子のプロですもんね?」


