船の上から、ルゥが見下ろしていた。こんな霧の中でもわかるのは、ここではルゥくらいか。




「あぁ、僕だ。船に上がっていいか?」




「勿論」




僕はロザリアさんを下ろして、船へ上がる。甲板には、グールの死体が数体転がっていた。どれも鋭利な刃物で切られている。




「リィとティスはどうしたの?」




「敵の罠にかかったらしい。転移魔法で城に飛ばされたと思われる。急ごう」




「リィが?わかった、急ごう」




僕はいきさつと推測を語る。そして白姫と蒼姫の霊力について伝えた。




「え、白姫と蒼姫ってそんな力があったの!?そっかぁ、成る程。それじゃ、ミウ」




「……私は「はい、蒼姫」……え?」




ルゥはミウに蒼姫を手渡した。そいつも連れて行くのか……。足手まといにならなければいいが。




「ミウの武器。今回は特別に貸したげる。使い方は行く途中で説明するね」




「……うんっ」




「じゃあ、行くぞ」




僕達は城に向かって走り出した。一刻も早くお嬢様を助けなければ。そして後で嫌という程叱責してやる。



僕は黒姫を手に、ただ真っ直ぐ城を睨み付けて走り続けていった―――。